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アストロロジー(占星学)の意義

 次の写真は雲を撮ったものです。まるで天使が羽を広げて空に上って行くようにみえました。私たちは、目の前にある景色を見てそこに何か形を発見し、それに意味を与えて、さらにはそこから物語まで作ってしまうことがあります。古代の人々が夜空の星を眺めていて、星と星を線でつないで何かの形を想像し、それらを人や動物の形としてとらえ、さらにそこからそれらの動物や人物にちなんだ神話を生み出しました。



 こうしてできた星座のうちから、太陽の通り道である黄道に沿って並んでいる12の星座が選ばれ、黄道12宮(12サイン)と名づけられました。英語ではzodiacと言い、獣帯と訳されますが、これは各サインを構成する星座にいろいろな動物(および人間)が割り当てられているからです。12サインは、牡羊座から始まって順番に牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座と続きます。


 星の配置を表す図(ホロスコープ)においては、中心に地球があり、その周りを10個の惑星(アストロロジーでは、太陽と月も惑星としてカウントするので全部で10個になります)が配置されています。地球からみて、それぞれの惑星がその時点で天空のどこに位置するのかが示されています。その外側を12のサインが並んでいる円が囲んでいます。この円は12等分されており、順番に各サインが割り当てられています。


 12分割された最初の円には牡羊座が割り当てられ、そこから順番に反時計回りで各サインが並んでいます。スタート地点を牡羊座の0度として30度になると次のサインがスタートし、最後の魚座の30度までいくと円を1周します。


 こうしてできたホロスコープにおいて、私の出生時の太陽は乙女座の2.2度にありました。こういうやり方で太陽の位置を表示すれば、太陽の位置を円周上に1点に指定することができ、太陽の位置を誰に対しても同じ位置として示すことができます。


 アストロロジーでは、ある惑星がどのサインに位置しているかということが重要な意味を持ちます。各惑星には固有の性質がありますが、それが背後(“背後”ということの意味は上の例で言えば「太陽の背後に乙女座がある」ということです)にあるサインの影響を受けて変化します。そして、出生時の各惑星のサインによって、その人の魂の性質が決められている、と考えます。


 例えば、太陽はその人が意識的にめざす方向を表す星ですが、それが私の場合、生まれた時に乙女座にあったということは、私が意識的に目指すものが乙女座的なものであることを表しています。乙女座の特徴は、物事を分析的に捉えたり、批判的に考えるといったことです。また、乙女座は仕事人間であり、細かな仕事もいとわずにやり続け、物事を分類、整理して体系化して考える傾向があります。


 自分を振り返って考えると、私には確かにそういう傾向があります。そういう私が、紆余曲折あった結果、職業として最終的に選択したのは、金融分野におけるアナリストという仕事でした。これは、特定の企業あるいはマクロ経済全体について資料や情報を集めて分析し、自分としての意見をまとめてレポートを作成したり、投資家に説明する、という仕事です。最終的には、この仕事を選択し、それをずっと続けて来ました。こういう仕事が好きなのだと思います。それを選択したのは一見すると偶然のできごとの結果のように見えますが、そこに生まれた時の星の配置が影響していた、ということが今から振り返って考えると納得できます。そして、あらためてアストロロジーのすごさを感じます。


 さて、各サインにはそれぞれ固有の性質がありますが、その性質はどこから生まれて来るのでしょうか。各サインの性質には、ユングの言うところの元型的な意味があります。たとえば、黄道12宮の最初のサインである牡羊座ですが、そこには牡羊というシンボル(象徴)が持つある元型的なイメージがあります。


 それを概念的に表したものが牡羊座のキーワードで、次のような言葉で表されます。すなわち、“突進”、“勇敢”、“冒険”、“積極”、“闘争”、“気概”、“機敏”、“精力”、“衝動”、“性急”などです。これらの言葉の持つ意味の中から浮かび上がって来る元型的イメージ、それが牡羊座のサインです。


 こうしたサイン(sign)の特徴は、2つの極性(Polarity、男性性と女性性)、 3つの性質(Quality、活動宮、不動宮、柔軟宮)、および4つの要素(Element、四大=地、水、火、風)の組み合わせからできています。2と3と4の最小公倍数は12なので、この3つの要素を組み合わせると12通りの異なった組み合わせができ、それが12サインの特徴になっています。例えば、Polarityが男性、Qualityが活動宮、Elemenntが火という組み合わせでできているのが牡羊です。それらの要素が一つにまとまって牡羊座の元型が形成されます。

 アストロロジーといのは端的に言ってしまえば、各惑星が黄道12宮上のどこに位置するかということから、様々な意味を引き出し、それらを組み合わせてその人についての物語を紡ぎ出し、そこからいろいろなメッセージを受け取る、ということだと考えています。ホロスコープを読むことでその人についての物語が浮かび上がり、それに沿ってその人の人生のドラマが展開する、といった感じです。


 ただし、ホロスコープの示すものがその人の人生を決定してしまう訳ではないと考えています。ホロスコープが示すものは、あくまでその人の持つ可能性や傾向を示すものであり、そうしたものを使って、実際に人生をどう生きていくかはその人自身に委ねられているのだと考えています。人間には自由意志があり、人生とは、与えられたその時その時の状況においてその人がどういう選択をしたかということの総決算なのだと思います。そこでの選択の傾向、自分ができることの可能性の範囲がホロスコープによって示されているのだと思います。


 アストロロジーというものを勉強し始めてからほぼ4分の1世紀が経過しましたが、アストロロジーを知ったことで、人生全体の流れの中で、自分の魂がどのような傾向を持ち、どういう方向に成長していくのか、といったことを意識しながら人生を送っていくことができるようになりました。また、生きていく上で自分の人生の目的や使命といったことが何なのか、といったことを考えるようになりました。それによって、それまでの状況に振り回され、ただ無我夢中で生きてきた人生と比べると、人生をよりよく、有意義に生きる方向に舵をきれたのではないかと思っています。

 
 
 

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