コンステレーション(星座)
- 水野 辰哉
- 2024年8月22日
- 読了時間: 3分
ユング派の心理学者である故河合隼雄先生がコンステレーションというタイトルで行った京大での最終講義で患者とのコミュニケーションに関して次のようなお話をされていました。コンステレーションとは星座という意味です。conは英語の接頭辞でtogetherとかwithということで共にという意味で、stellaというのは星を意味します。
先生はクライアントが話すことにパッと飛びつくのではなく、フンフンと聴いてできるだけ話を引き出すことが大事だと言っています。それによって全体の状況を見ることが大事なんだと思います。クライアントが抱えている問題はクラインアントの目の前にあって、クライアントにとっては大問題な訳ですが、実はその後ろに隠れた問題がある。それを含めて全体をみなさい、ということなのだと思いました。
具体例として、ある時河合先生の部屋に学生が飛び込んできていきなり「先生は卦を信じますか?」と聞いてきたことがあったそうです。そういう時、大事なのはすぐにそこに焦点を当てるのではなく、その人の状況を全体的に把握できるよう、できるだけ話を聞くということだそうで、そうやっていろいろ聞いていくとその学生が在日韓国人で、試験に受かって憧れの祖国に帰れることになったが、高島占断の本をみたら「高みに昇って落ちる」と書いてあったので、心配になって河合先生のところに来たというのです。
その人は易の内容から、自分の乗っていく飛行機が落ちるのではと心配している。それに対して先生の最終的な判断は、この人は祖国に対してあまりに高い評価をしているのが、実際に帰ってみたら現実に出会ってがっかりして気落ちするのでは、というようなことでした。その人は、河合先生からそういう読みを聞いてから祖国に向かったので、過大な期待を抱かずに祖国に対することができ、現実に平静に向き合えてよかったということでした。
結論としては、だまって聞いていてクライアントからいろいろ出て来ることを聞いて、最後にそれをコンステレーションとしてまとめることが大事だとおっしゃっていました。あと、大事なこととしてはコンステレーションの読みの中に、リーダーの個性が入ってくることが大事なんだとおっしゃっていました。
コンステレーションには星座という言う意味がありますが、星座には神話がつきものです。クライアントの話す内容を物語としてまとめ、そこに意味を見つけるのがリーダーの役割なのだと思います。初めから焦点を当てて話を聞くと話が限定されてしまう。そうではなく、できるだけ開かれた態度でクライアントの話を聞き、コンステレーションを聞いていくことが大事なんだとおっしゃっていました。
ただ、その過程で余計なことをしないことが肝心なんだけれども、それが中々難しくてどうしても何かしてしまう。話の途中で余計な解釈をしてしまったりするのだとおっしゃっていました。経験によって段々そうしたことを減らしていく。コンステレーションが見えて来るまで辛抱強く待つことができるかどうかが大事だと思いました。
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