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タロット・リーディング

更新日:2024年9月23日

 タロット・リーディングでは22枚の大アルカナの中から偶然出て来たカードを一定のルールに従って並べていき、そこに何かストーリーを見つけ出そうとします。


 そうやって、クライアント(顧客=問題を抱えた人)とリーダー(タロット・カードの読み手)との間の対話を通して、何かストーリーが浮かび上がって来ると、それがクライアントの抱える問題の解決につながるヒントを与えてくれることがあります。課題解決のヒントが何らかのストーリー(=物語)を通して与えられるのです。


 過去に実際あったリーディングの例で説明したいと思います。カードの展開としてはシンプルに4枚だけで終わりました。それは出された質問に対して、物語のように展開し、そこに意味が発見できたように感じました。それはクライアントさんの心にも強い印象を与えたようでした。


 クライアントさんの質問は趣味で行っているハンドクラフトについてです。彼女は、場合によってはそれを仕事とすることも考えているとのことでした。


 彼女は数年前から、そのハンドクラフトを学ぶためにあるグループに入り、そこで勉強を続けてきました。ところが、最近制作がなかなか進まなくなってしまい「どうしたら現在のスランプから抜け出して制作を進めていくことができるようになるか?」という質問でした。


 22枚の大アルカナのカードをシャッフルしてもらい、クライアントさんに裏向きのまま好きなカードを引いてもらいました。最初に引いたカード、これを“現状”カードと呼んでいますが、XVI の“神の家”が正立(ローマ数字が上の状態)で出てきました。


 私が使用しているマルセイユ版のタロット・カードではこのカードに特に悪い意味はありません(正立の場合。もし、カードが逆向き(上下が反対)に出た場合は、何か課題や問題があると考えます)。ただ、世界中で一番広く使われているウェイト版ではこれは“塔”のカードであり、塔の崩壊をイメージさせる不吉なカードです。


 マルセイユ版では、カードに描かれている建物の周りには神の祝福を受けたマナ(神から授かった食物)が丸い玉として降っています。建物の上部には神のエネルギーが稲妻となって注がれ、さらに“誇り”を示す“王冠”が上から降りて来ています。


 カードの中に描かれている二人の男性のうち、一人はたまたまその建物の前を通りかかった男性で、その光景を見て、驚いて逆立ちし、もう一人はそれまで建物の中にいたのが、歓喜のあまり身体の一部が建物の外に飛び出しています。快感が強いと魂が身体の外に出てしまう現象をエクスタシーといいますが、この男性は今まさにエクスタシーの状態にいます。



 次に最初に引いた現状カードの左側に“経緯”のカードを裏向きで引いてもらいます。開けてみるとそれは XVIII の月のカードでした。このカードには空に月が浮かんでいて、それに向かって無数の水滴のようなものが上昇しているところが描かれています。この水滴の一つ一つは人間が夜見る夢であり、月は人間の見る夢を吸い上げ、それからエネルギーを得ていることが示されています。月は人間の夢や潜在意識に関わっています。


 地上には二匹の犬がいます。一匹は物欲や肉欲を示す肌色をした犬で、もう一匹は霊的なものを表す空色の犬です。二匹は赤い舌を出してさかんに吠え合っています。カードの下半分には池が描かれています。その表面にはザリガニのような生き物が浮かんでいます。この生き物は普段は水の底の岩陰に潜んでいるのですが、月夜の明るい晩、風もなくて水面が鏡のようになっていると、静かに水面に昇って来ます。


 次に現状のカードの右側に“展望”のカードを引いてもらいます。開けてみるそれは XIII のカードでした。このカードには名前がついていません。このカード、実は名前が無い訳ではなく名前はあるのですがあえてそれは書かれていません。名前を書くのが恐れ多い存在だからです。


 このカードを西洋人が見ると、“死神”を連想するでしょう。骸骨が鎌で周囲をなぎ倒しているからです。しかし、よく見ると描かれているのは骸骨ではありません。ちゃんと鼻があるし、やせ細ってはいるものの骨に肉もついています。だから死神ではありません。片足が黒い地面の中に少し埋まっています。地面の中にはいろいろなものが埋まっています。手足や骨、それに男女の生首もあります。笛のようなものも埋まっています。


  XIII のカードは“視線”を右の方に向けていますので、視線の先にもう一枚カードを引いてもらいます。そこで出てきたのはIの仕事師のカードでした。


 ここでは若い男性がテーブルの上にいろいろなものを広げ、道端で何かやっています。この人物は、寅さんのような的屋(てきや)あるいはデパートの実演販売のように、手八丁口八丁で見物人に何か物を売りつけているのかもしれません。あるいは大道芸人で見物人に何か手品のようなことをしているのかもしれません。


 このカードには“仕事”というキーワードの他に“新規”“活発”という二つのキーワードがあります。仕事師の視線は左側の XIII を向いていて、右側に視線はありません。またこの展開には逆向きのカードは出て来ませんでした。したがって、カードの展開は以上で終わりです。


 さてクライアントの質問に対して、カードの展開をどう読むかですが、私は次のようなリーディングをしました。まず現状ですが、“神の家”が正立で出ています。カードの建物はレンガが何段も積み重なってできています。建物はすでに出来上がっているので、これは彼女が学んできたハンドクラフトの技法がこれまで積み上げてきた知識や経験によって完成に近づいていることを示します。


 それを祝福するように天からはマナが降っています。また、制作に必要なインスピレーションも神の稲妻として建物に注がれています。王冠が天から降りてきているのは“戴冠”を意味し、彼女が自分の制作に自信や誇りを持ち始めていることを示しています。驚いて逆立ちしたり、建物から身体が半分飛び出している人は、制作が完成した時の彼女の喜びを表しています。現状のカードは正立なので現状、特に問題はありません。


  そうした中で彼女は、思うように制作が進まないという悩みを抱えています。これはどうしてでしょうか。答えは経緯のカードにあります。


 経緯のカードは月のカードですが、ここでは池の中のザリガニが水面に浮かび上がってきています。水は心や感情を表しますので、この池は彼女の心を示しており、池の底のザリガニは、彼女が心の奥底に持っている本当の気持ち、情念のようなものを表します。今、彼女の心の中では自分の本当の気持ち、情念が静かに浮かび上がってきているのです。


 二匹の犬が吠えあっていることにもそのことは示されています。一匹の肌色の犬はいわばタテマエとしての彼女です。もう一方は彼女のホンネです。今、彼女の中でタテマエとホンネが激しくぶつかり合っているのです。


 話を聞くと、彼女はハンドクラフトの技術を学ぶために所属したグループの人間関係やルールに対し、最近煩わしさを感じているようです。グループの人たちあるいはそのリーダーと波風をたてずに付き合っていきたいというタテマエとそこから飛び出して自由にふるまいたいという彼女のホンネが今激しくぶつかり合っているのではないかと思って聞いてみると、どうもそれは当たっているようでした。


 次に展望のカードです。これから事態がどう展開していくかを示すカードで、ここには XIII のカードが出ました。このカードのキーワードは“変容”です。これは、これから彼女が変化していくことを示しています。


 しかし、カードの人物が持っている鎌に血がついていることから分かるように、変容には痛みが伴います。彼女が変容するためには、今までの人間関係のしがらみやルールで彼女を縛ろうとする組織やリーダーとのつながりを断ち切る必要があります。それは痛みを伴うものですが、こうした破壊の過程がないと変容は行えないのです。


 変容のカードの視線の先には I の仕事師がいます。このカードが示しているのは、彼女は今の人間関係等のしがらみを断ち切り、これまでやってきたハンドクラフトの制作を自分の“仕事”として“新規”に始め、作品を“活発”に作っていくことになるということです。


 以上がクライアントさんの質問に対する私の読みです。私としては、カードの展開を物語として読むことができ、いいリーディングができたと感じました。たぶん、クライアントさんにも喜んでもらえたと思います。

 
 
 

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