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影について

・ ユング派の心理学者として日本を代表する方だった故河合隼雄先生は『影の現象学』(講談社学芸文庫)という本の中で「われわれは常に自分の影の自覚をもって他者に接することが必要であり、・・・・・それはマイナスもプラスも共に含むものである。ただ、厳しい対決と自覚を経ぬときは、それは思いがけぬ破壊的な効果を与えるのである。影の恐ろしさを感じすぎる人は、それとの接触を回避し、影のもつせっかくのプラスの面を引き出すことができない。・・・・・影は『もう一人の私』の存在として自覚されることが多く、私がもう一人の私とどうつきあうか、ということが本書の課題ということができる」と書かれています。


・ 影は、その名のように自分の背後にあって、普通は自分には見えない存在です。しかし、その存在を無視していいかというと、決してそんなことはありません。影は見えない形で私たちの行動を左右し、私たちの人生を左右しています。自分の人生を本当に生きるためには、この影の存在に気づき、それがどういうものであるかを知ることがとても大事なことに思えます。


ムンク「思春期」
ムンク「思春期」

・ しかし、影はその存在をなかなか明らかにしようとはしません。それは私たちの無意識の中にあるからです。どうしたら影に出会うことができるのか?一つは夜見る夢の中に出てきます。夢はある意味で私たちの潜在意識の反映です。ですから、夜見た夢を覚えていてそこに出て来るものの意味を考えていると、その中にこれが影ではないか、というものに出会うことができます。それは人物かもしれませんし、あるいは事物や動物かもしれません。その存在は自分にとって決して心地のよいものではなく、むしろ怖いものだったり、おぞましいものだったりする可能性が高いと思います。ですからあまりそれとは関りたくないと思うかもしれませんが、影を含んだ全体が自分というものであり、自分の全体像が見えてこない限り、本当の自分を生きることはできないと思います。


・ 本当の自分を生きていないと、毎日なんとなく過ごしていても、そこには何か虚しさがあると思います。本当の自分を知って生き生きとして人生を送っていくためには、影を発見しそれとつきあっていくことが必要だと思います。ただ、影はそう簡単にその正体を現しません。辛抱強くその存在を探っていく必要があります。夢はそれを知るための一つの手段ですが、見た夢を覚えている人は少なく、憶えていたとしても見た夢をどう解釈するかというのは、中々難しい作業で一筋縄ではいきません。


・ そうした中で河合先生が行っていたのは“箱庭療法”です。これはいろいろな小物をつかって、小さな箱の中に自由に箱庭を作ってもらう作業です。その結果、その箱の中にどんな世界が出現したか、ということからその人の影を含む無意識の心の状態を探ろうとするものです。タロット・リーディングにはこの箱庭療法と似た面があります。十分シャッフルして裏向きになっているカードの中から次々にカードを選び、それを決められたルールに従って並べて行きます。そしてできあがった一連のカードからその人にまつわるどんな物語を紡ぎ出してくるかということの中に、その人の無意識や影の存在が現れてきます。それを辿ることで、本当のその人の心の世界に迫ることができるのではないかと考えています。



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